ディレクターメッセージ vol.10 2017年7月25日

1969年生。宮崎県出身。舞台演出家、放送作家。早稲田大学政経学部卒業後、演出家を志す。 劇団山の手事情社演出助手、劇団吟遊市民主宰を経て、現代舞台芸術ユニットOrtを始動。 2007年よりTheatre Ort主宰・演出を務め、 さらに劇団公演以外にもオペラやミュージカルの演出を手掛けている。 10年~14年3月までにしすがも創造舎アソシエイト・アーティストに就任。 構成・演出作品である「子どもに見せたい舞台」シリーズは毎年好評を博し、地域の文化活動に貢献した。 洗足学園音楽大学、桜美林大学講師。演劇やリーディング、コミュニケーションのワークショップも数多く行っている。
Theatre Ort にしすがも創造舎

たちかわ創造舎チーフ・ディレクター倉迫康史Koji KURASAKO プロフィール

1969年生。宮崎県出身。舞台演出家、放送作家。早稲田大学政経学部卒業後、演出家を志す。 劇団山の手事情社演出助手、劇団吟遊市民主宰を経て、現代舞台芸術ユニットOrtを始動。 2007年よりTheatre Ort主宰・演出を務め、 さらに劇団公演以外にもオペラやミュージカルの演出を手掛けている。 10年~14年3月までにしすがも創造舎アソシエイト・アーティストに就任。 構成・演出作品である「子どもに見せたい舞台」シリーズは毎年好評を博し、地域の文化活動に貢献した。 洗足学園音楽大学、桜美林大学講師。演劇やリーディング、コミュニケーションのワークショップも数多く行っている。
Theatre Ort にしすがも創造舎

2017年の夏がやってきました。酷暑というべき日々が続いていますが、夏はたちかわ創造舎が、子どもたちや近隣の方々、サイクリストたちで最も賑わう季節です。涼しい部屋とWi-Fi、アイスクリームやドリンクの自販機とシャワーが、皆さんのお越しをお待ちしております。

本格稼働から2年目を迎えた創造舎は、昨年度より発信力を増した施設として活動の場を増やしています。たとえば演劇事業は、立川市子ども未来センター、くにたち市民芸術小ホールで定期的に上演を行うようになったほか、環境フェアなどのイベント、富士見町児童館、西砂学習館、柴崎サマー学童保育所など立川市内の公共施設、武蔵野市の武蔵野市民会館や吉祥寺シアターなどに広げていっています。

たちかわ創造舎は各事業を通して「地域社会の活性化」に貢献することを目指しています。地域社会にもいくつかの層があって、たちかわ創造舎がある富士見町の活性化に始まり、立川市の活性化、多摩エリアの活性化、東京都の活性化と広がっていきますが、創造舎は富士見町から多摩エリアまでを視野に入れています。富士見町に目を向けた時と、多摩エリア全体に目を向けた時では、同じ演劇事業や自転車事業でも違うやり方や方向性で進めなければなりません。

それにしても、「地域社会の活性化」とは何でしょうか?住む人が増えることでしょうか、それとも商売がさかんになることでしょうか、訪れる人が増えることでしょうか。もちろん、そういう側面もあるのでしょうが、私の考える「地域社会の活性化」とは「活き活きとした人と人とのつながりが生まれること」に他なりません。それには「同じ場に立ち会い、同じ体験をして、感想を語り合うこと」が重要です。それぞれの地域社会のサイズや性質に合った、「場」と「体験」と「語り合い」をどうデザインするか、ディレクターとして最も心がけていることです。

もう一つ、「地域社会の活性化」を考えるときに、私が心がけているのは「すでに地域社会をサポートしている人をサポートする視点を持つ」ことです。支援する人を支援するとは言葉遊びのように感じるかもしれませんが、私はこのことを今の日本社会を支える生命線だと思っています。例えば役所の方、警察官など公務員の方、学校の先生や職員の方、児童施設の方、福祉施設の方、自治会の方、商工会議所の方など、地域社会を支える担い手をサポートすること。NPO法人(特定非営利活動法人)の本来の役割はここにあります。

幸いなことに、たちかわ創造舎には私たちを訪ねて、多くの人が相談に来てくれます。私たちは慈善団体ではないので、ボランティアで何かして欲しいという依頼はお受けできませんが、営利団体でもありません。予算の範囲内でできることは何か、どんなデザインの事業なら可能か、どんなサポートなら可能かを、相談に来てくれた方と一緒に考えています。それが、たちかわ創造舎の発信のスタートラインであり、地域社会の活性化に向けた一歩です。

夏以降も、そんな創造舎の事業が目白押しです。ぜひ、情報をチェックしていただければと思います。創造舎だけでなく、様々な場所で皆さんのお越しをお待ちしております。

ディレクターメッセージ Vol.9 2016年度に終わりに

 

2016年度もいよいよ終わりに近づき、たちかわ創造舎が本格稼働して最初の年度が終わろうとしています。ほっと一息、と言いたいところですが、残す今年度の事業として、コミュニケーション・スクールの「おとなのための音読講座」(14日・21日)、放課後シアター『ブレーメンの音楽隊~グリム童話より~』があります。音読講座の講師と放課後シアターの台本・演出は私の担当ですので、まだまだ気が抜けません。音読講座は早々に定員に達し、予約を締め切りましたが、放課後シアターは予約不要ですので、ぜひお誘いあわせの上、ご来場ください。

たちかわ創造舎の2016年度は、初年度だから当たり前ですが「開拓」の一言でした。インキュベーション・センター事業、フィルムコミッション事業、サイクル・ステーション事業、交流等創出事業のそれぞれで、多くの企画が産声をあげ、集まった参加者の方から大きな反響を得ることができました。まさに【場】を開拓し、そこに人々が【集う】ことをがむしゃらに行った一年と言えます。

インキュベーション・センター事業では、ディレクターメッセージ vol.7「たちかわ創造舎一周年にあたって」でも書いた通り、シェア・オフィス・メンバー4団体ともに、一年目から立川市の文化に積極的にコミットし、成果を挙げてくれました。

特筆すべきは、年度の後半に行われた、シェア・オフィス・メンバーと創造舎の合同企画です。くにたち市民芸術小ホールでの合同ワークショップと『仮装朗読劇 アラビアンナイト』の上演、たまがわ・みらいパークまつりでの「えんげき広場」の開催。どちらも祝祭性の高い企画で、地域住民の方たちと演劇人が交流することで、場の熱量が上がる姿を随所で目撃しました。私は以前から、「市民とアーティストが出会う」という非日常性が、市民にとってもアーティストにとっても良い影響を及ぼし合うと思っていましたが、それを確信できた二つの「お祭り」でした。

たちかわ創造舎の経営を支えるフィルムコミッション事業では、撮影貸し出しが順調に増え、地元の方々が「またテレビに出てたねー」と嬉しそうに報告してくださると、こちらも嬉しくなります。地域の方たちにとってはこれも非日常と出会うことの一つなんだなと思います。「今日は何を撮ってるの?」と尋ねてくれる方も多いのですが、何を撮影しているのかは基本的にはシークレット(ごめんなさい)。でも時々、許可を得た撮影レポートを、たちかわ創造舎のFacebookに掲載していますので、気になる方はぜひチェックしてみてください。

フィルムコミッション事業は、撮影のために場所を貸すだけでなく、最新映像機材の体験会や映像ワークショップにも協力しています。先月行われた撮影監督による最高級の映像機材を使った映像ワークショップでは参加者の方々が昼食を取るのも忘れるほど、熱気あふれるワークショップになったようです。映像アーティストの方たちにとっても、創造舎は「創る」だけでなく「学ぶ」場になってきています。

プロフェッショナルによる「学びの場」として、サイクル・ステーション事業でも先月、「自転車乗りのカラダとココロのための連続講座」を開催しました。「料理」と「ヨガ」をテーマに第一線で活躍される方を講師にお迎えし、サイクリストにも一般の方にも役に立つ、興味深い講座が行われました。

今年度のサイクル・ステーション事業として行ったイベントは、来年度も引き続き開催されます。その中で、自転車に乗る楽しみが味わえる、多摩川沿いを散走する「たまライド」や、立川市内の観光スポットを自転車でゆっくり回遊する「たちポタ」は、参加者同士が交流する格好のイベントです。一緒に走って、おしゃべりしているうちに、自然と仲良くなっていきます。私もクロスバイクに乗っていますが、立川や多摩川は自転車で走るには本当にいい場所ですので、来年度はぜひ皆さんもご参加ください。一緒に走って、おしゃべりしましょう。

「創造」「学び」「交流」の場を開拓し、人々がその場に集まることを目指した、たちかわ創造舎の2016年度でしたが、2017年度はさらにそれを深め、広げていくことを目指します。そのために、これまでの「交流等創出事業」を「コミュニティ・デザイン事業」と名を変え、展開していくことにしました。

交流等創出事業は、主に演劇を通して「市民と市民」「市民とアーティスト」「アーティストと子どもたち」が交流する場を創造してきました。前述したシェア・オフィス・メンバーとの合同企画も「交流等創出事業」になりますし、放課後シアターや立川シアタープロジェクトもそうです。立川シアタープロジェクトとして12月23日24日に、たましんRISURUホール・大ホールで上演した、子どもとおとながいっしょに楽しむ舞台vol.1『音楽劇 アラビアンナイト』は、当初の予想をはるかに超える約1350名の方にお越しいただけました。これは立川市にとっては大きな事件と言っても、過言ではありません。

来年度のたちかわ創造舎は、「交流等創出事業」を文化を通したさらなるまちづくりの事業を提案・発信する「コミュニティ・デザイン事業」とし、主に以下のようなことを行っていきます。

1.芸術文化やサイクルスポーツで街を活性化する事業を企画・製作、たちかわ創造舎内外にて発信。
2.行政や公共団体、商業施設の文化事業に協力して、イベントやプロジェクトを企画・運営。
3.学校や教育機関を連携して、各世代に向けた「学び」の機会と「体験」の場を創出。

たちかわ創造舎内だけでなく、立川市や多摩エリアのあちこちで「創造」「学び」「交流」の場を生みだし、市民の皆さんとともに街をおもしろくデザインしていきたいと考えています。

ディレクターメッセージ vol.8 子どもとおとながいっしょに楽しむ舞台『音楽劇 アラビアンナイト』間もなく開幕

 

いよいよ今週末に、立川シアタープロジェクト実行委員会(立川市・立川市地域文化振興財団)による、子どもとおとなが一緒に楽しむ舞台vol.1『音楽劇 アラビアンナイト』の、たましんRISURUホールでの公演が迫ってきました。市、財団をはじめとする様々な方の協力を得て、お蔭さまで23日(金)の回は前売り予約分600席(大ホールの一階席のみ使用)が完売、当日券を残すのみとなりました。当日券は開演の1時間前、お昼の12時より販売予定です。(この日しか来られないという方、諦めないでください!)

24日(土)の回も、クリスマスイブの予定が決まったからか、ここにきて予約がどんどん伸びています。13時開演、上演時間約80分ですので、14時30分には劇場を出られます。その後、お買い物をしたり、パーティーに出かけたりするには良い時間ではないでしょうか。開場時間中にはロビーで簡単な工作のミニ・ワークショップもやっています。イブの予定が決まっていない方は、ぜひ劇場で過ごす楽しいひとときを候補に入れていただければと思います。

すでに2公演で1000名を超える予約をいただきました。正直、驚いております。動員目標は850名でした。チラシ45,000枚・ポスター200枚による広報、「アラビアンナイトの世界を知る連続レクチャー&ワークショップ」などの関連企画や、よみしばい『アラジンと魔法のランプ』や『アリババと40人の盗賊』といった事前イベントの実施など、さまざまな要因がありましょうが、やはり大きかったのは「立川で良い演劇を!」という関係者一同の熱意と、皆さんからの期待が合致したことにあると思っています。キャスト・スタッフ一同、こういう企画を待ってくださっていたのだなという期待をひしひしと感じ、身が引き締まる思いです。その期待に応えるべく、最終稽古、会場での仕込みとリハーサル、初日が開けるまで、ブラッシュアップにはげんでおります。そして、観劇を迷っている方、ぜひ、この記念すべき最初の試みを目撃していただけたら幸いです。

なお、稽古にあたっては、連携団体である「たまがわ・みらいパーク」に多大なるご協力をいただきました。深く感謝いたします。

子どもとおとなが一緒に楽しむ舞台vol.1『音楽劇 アラビアンナイト』、街がウキウキとした気分に彩られる祝祭の時期に観劇を通して、子どもたちにも大人の皆さんにも、演劇、劇場、文学、そして異文化に興味を持っていただき、そこからさまざまな対話が生まれたら、一アーティストとして、これにまさる歓びはありません。

ディレクターメッセージ vol.7 たちかわ創造舎一周年にあたって

 

 9月27日のオープンから早くも一年が過ぎ、今年度も半分が過ぎました。
 前回のディレクターメッセージより、ずいぶん間が空いてしまいましたことを、まずはお詫び申し上げます。お蔭さまで、たちかわ創造舎は6月より9月まで、スタッフ一同、怒涛と言っても良い、充実した日々を過ごしておりました。一周年を迎えて、ようやく一息をついたところです。
 オープン以来、特に今年度に入ってから、たちかわ創造舎の活動は、私たちが予測していたよりも早く、そして広く、展開していきました。次から次へとやってくるミッションを少ない人数でクリアしながら、少しずつですが、文化創造施設としての「たちかわ創造舎」の存在を、近隣の住民の方や立川市民の皆様に知っていただけている手ごたえを感じています。合わせて、舞台芸術関係、映像制作関係、サイクル関係と言った専門分野の方々から、私たちの三つの事業(インキュベーション・センター事業、フィルムコミッション事業、サイクル・ステーション事業)に熱い期待が寄せられていることも、強く感じております。

 今年度に入ってからの動きを改めて振り返ってみますと、我ながらその多彩さに驚きます。

 インキュベーション・センター事業としては、シェア・オフィス・メンバーの企画が次々と実現しました。すこやかクラブによる学校を探検型演劇の劇場に変えた『真夏のたちかわ怪奇クラブ』、風煉ダンスによる立川市子ども未来センターの芝生広場を劇場に変えた野外劇『スカラベ』、鮭スペアレによる多摩エリアの中高生との創作ワークショップ『中高生×シェイクスピア×音楽劇』など、舞台芸術を通じて「街をおもしろくする」活動を発信しています。そしてチョーク・アーティストのChalk2Uは、この秋から「ららぽーと立川立飛」にて講座を開催します。
 地域との交流事業として、プロジェクト・パートナーのTheatre Ortと6月からスタートした「放課後シアター」も、『ヴェニスの商人』『星の王子さま』『アラジンと魔法のランプ』『イワンのばか』と4作品を上演し、地域の方から愛される催しとなりつつあります。特に、大人が子どもに観劇をプレゼントする「あしながチケット」は、芸術を通じた社会包摂の試みとして注目されています。Theatre Ortは、たちかわ創造舎最寄りの小学校である新生小学校に、芸術家派遣事業として『注文の多い料理店』を各学年に向けて計6回上演するなどの活動も行っています。

 フィルムコミッション事業は、連続ドラマ『早子先生、結婚するって本当ですか?』、『でぶせん』、AKB48メンバーが出演する『CROW’S BLOOD』、スペシャルドラマ『模倣犯』など、大規模な撮影が入ることも増え、テレビなどでたちかわ創造舎を目にする機会も増えました。10月には初の映画撮影も予定されています。フィルムコミッション事業用の専用パンフレットも作成、使いやすく、メリットの多い学校スタジオとして、より積極的に今後もプロモーションしていきます。

 サイクル・ステーション事業では、スポーツサイクルが最短で上手になる『じてんしゃの学校』で、技能検定合格者に贈るオリジナルのピンバッヂを製作、参加者に喜ばれました。子どもたちに向けては、世界中で開催している「IMBA Take a Kid Mountain Biking Day」を、『たちかわ自転車キッズデイ』として多摩川河川敷で開催。たくさんの子どもたちが集まりました。先日は、サイクルサッカーとサイクルフィギュアのドイツジュニア選手団が来日、体育館でデモンストレーションを行い、立川市長も訪れ、喝采を送っていました。
 このように「サイクルスポーツ」を切り口に様々な企画を行うほか、奥多摩の流木を活かしたシャワールームとロッカールームの完成、セブンティーンアイスの自販機の導入、ギャラリーでは期間限定で自転車メーカーTREKのフォトギャラリーを開催するなど、サイクリストが立ち寄りやすい施設として設備を整えていきました。

 たちかわ創造舎の単独の事業だけでなく、立川市の主要な組織との協働での事業も増えています。立川市と公益財団法人立川市地域文化振興財団と立ち上げた「立川シアタープロジェクト」、立川商工会議所主催の「たちポタ(たちかわポタリング)」の企画運営、立川青年会議所主催の「シティプロモーション・ムービー」への協力、エキュート立川主催の「屋上シアター」の企画運営など、立川市全体がたちかわ創造舎の活動場所となりつつあります。今後も、いろいろなところ、いろいろな形で、「たちかわ創造舎」の名前やロゴマークをご覧になる機会が増えていくと思います。ぜひ、ご注目ください。

 明日からまた、秋から年末にかけて怒涛の日々が始まります。皆様に「たちかわ創造舎の活動は、なんだか刺激的で面白い」と思っていただけるようなアイデアを、多摩川のほとりのこの場所でスタッフ一同、頭を絞って形にしていく所存ですので、今後とも応援をよろしくお願いいたします。

ディレクターメッセージ vol.6 コミュニティ(共同体)の再生を促す演劇のチカラ

新しい年度の始まり、たちかわ創造舎も新しい顔ぶれが揃いました。昨年9月末からの半年間の試験的な運用が終わり、これからの5年間に向けての新しいスタートを切ることができました。
 今年度からの新たな動きとしては、多くの演劇事業が始まります。私の本職は舞台演出家なので、本領発揮といったところです。すでに5月3日の子どもの日には、立川駅前の商業施設「エキュート立川」と協力して、エキュート立川の屋上庭園で演劇を上演する「屋上シアター」を開催。僕の構成・演出で、Theatre Ort(シアター・オルト)による『エルマーのぼうけん』と『おしいれのぼうけん』を上演しました。上演は「よみきかせ」と「おしばい」を合わせた「よみしばい」という、どこの場所でも上演できるスタイルで行いました。いつもの駅前が、いつもとはちょっと違う「劇場空間」になったのを、50人を超えるお客さまに楽しんでいただけました。
 5月7日からは、演劇的手法を活かしたコミュニケーションの学校、「たちかわ・コミュニケーション・スクール」が開校しました。第一弾は英会話を演劇で学ぶ参加型シアターの「ぷれいご」。こちらは、立川市を拠点に海外でオリジナルの作品を発表するために活動する現代演劇ユニットMY COMPLEX(エムワイコンプレックス)が講師をつとめています。全8回の講座で、8回目には英語の台本を使った作品発表まで行います。女性ばかりですが、中学生から30代の方までが参加しています。

 他にも、今月28日に立川の街を自転車で散策する「たちポタ(たちかわポタリング・モニターツアー)」では、ツアーガイドを俳優がつとめ、各スポットを演劇的に紹介していくということを行います。自転車を使ったツアー演劇ですね。これは、立川の街のいたるところを「劇場空間」にしてしまおうという、壮大な野心の第一歩です。
 このように、たちかわ創造舎の演劇事業は、単に演劇を上演するだけではなく、商業や教育、観光など、さまざまな産業とコラボレーションする形で行うことが多いです。なぜ、演劇にそんなことが可能なのか、不思議に思う方も多いと思います。演劇の持つ力について、簡単ですがご説明します。
 誤解を恐れずに言うと、演劇には「コミュニティ(共同体)の再生」を促す力があります。その力とは「言葉によって心を通い合わせること」と「日常をひととき非日常に変えること」の二つです。一般的な言葉に置き換えると、前者を「コミュニケーション」、後者を「祝祭」と呼びます。
 コミュニケーションとは単なる「情報の伝達」ではなく「ことばや体を媒介に心を通い合わせていく」ことであり、それが支え合うことにつながっていきます。祝祭とは「普段とは違う空間で、普段とは違う人間関係で、普段とは違う時間を過ごす」ことで、見慣れたはずの風景や慣れきってしまった人間関係の新たな魅力を発見することにつながっていきます。
 同時に、コミュニケーションも祝祭も限定的なものであり、万能ではないことから、私たちは日常を生きていかざるを得ないこと、他者と心が通わないことが多いことも知っていきます。それもまたコミュニティを生きぬく知恵につながっていきます。

 今、地方都市の産業は、コミュニティの再生もしくは再発見と不可分であると言えます。それゆえに、演劇がさまざまな産業と結びつくことができる可能性が高いと、私は考えています。また、そうするためには、どんな現場でも演劇の持つ力を発揮できるように、私たちが演劇の技術や教養を磨いておく必要があります。
 演劇と産業をどう出会わせるか、今後もいろいろな形で試行錯誤を重ねていきます。好奇心とあたたかい目線を向けていただけると幸いです。ぜひ、皆さんもその試みに参加してください。

ディレクターメッセージ vol.5 知的好奇心と遊び心のためのディレクターズ・サロン

 

3月26日(土)にディレクターズ・サロンvol.1「廃校から廃校へ 立川と奥多摩がつながる未来」が無事、開催されました。ディレクターズ・サロンは、僕が「いま、市民と一緒に考えたいテーマ」を「いま、話を聞きたい専門家のゲスト」を招いて交流する、知的好奇心と遊び心のためのプログラムです。ゲストが影響を受けた本を俳優がリーディングするブック・パフォーマンス、その場にいる人全員の思考を楽しく深く刺激することを目指したクロス・トーク、そして、参加者の皆さん、ゲスト、シェア・オフィス・メンバー、創造舎スタッフが一緒に飲み食いをしながら語り合う交流会、その三つが1セットになったのが、ディレクターズ・サロンです。

 vol.1のゲストは、菅原和利さん(株式会社東京・森と市庭 営業部長)と藤原祥乃さん(株式会社まちづくり立川 事務局長)。東京・森と市庭は、たちかわ創造舎と同じく廃校を再生した「奥多摩フィールド(旧・小河内小学校)」を運営しているという共通点あるのに加え、今、たちかわ創造舎のロッカールームとシャワーブースを奥多摩の木で作るプロジェクトを一緒に進めています。さらに偶然にも、「立川という都市と森の中間地点で、自由で新しい働き方の場を提供したい」「東京の大切な資源でもある奥多摩の森を長く守っていきたい」という思いで、株式会社まちづくり立川と共同で奥多摩への玄関口である立川駅前に「森のシェアオフィスKODACHI」の開設を進めています。
 たちかわ創造舎と東京・森と市庭とまちづくり立川が、まさに運命の出会いのようにつながったことで生まれたのが今回の企画です。

 ブック・パフォーマンスでは、藤原祥乃さんが選んだ『少年H』(作:妹尾河童)と、菅原和利さんが選んだ『思考するカンパニー』(作:熊野英介)を、僕が構成・演出、プロジェクト・パートナーズのTheatre Ort の俳優、村上哲也と平佐喜子が演劇的に紹介。戦前の昭和の子どもたちの様子を生き生きと描いた『少年H』と、日本の近代を考察し、これからの仕事や会社のあり方について提言する『思考するカンパニー』、近代から始まり戦前、戦後、今にいたる日本について思いをはせる構成となりました。
 「なぜ、その本を選んだのか」から始まったクロス・トークは、「東京の森を再生するには」「都市と森が結びつくことがどんな可能性が広がるか」「単に物を作るのではなく、価値を作ることの重要性」にまで話が広がり、参加者の皆さんを大いに刺激できたようです。
 トークの後の、屋上での交流会は、春三月とはいえまだまだ風が冷たかったものの、皆で奥多摩のジビエ(鹿肉)や、立川の地元野菜に舌鼓を打ちながら、そこかしこで談笑の広がる楽しい時間となりました。交流会では、準備の段階からシェア・オフィス・メンバーが強力サポートをしてくれ、「チームたちかわ創造舎」としての一体感が強まったような気がします。

 参加者の方からは「すべてが豊かな時間だった」「五感が刺激された」「短い時間に内容がギッシリつまってた」など、さまざまなお褒めの言葉をいただきました。ぜひ、今後もディレクターズ・サロンを定期的に続け、知的好奇心と遊び心が出会い交流する場を、たちかわ創造舎にてプロデュースしていきたいと考えています。次はさらに多くの皆さんの参加をお待ちしています!

ディレクターメッセージ vol.4 シェア・オフィス・メンバーとプロジェクト・パートナーズへの期待

 2016年からこのディレクターズメッセージは月に一回、お届けします。

 オープン時より募集してきましたシェア・オフィス・メンバーですが、私とチーフ・マネージャーの陽が必ず立ち会い進めてきた、一次面談、企画書の提出、二次面談という慎重かつ厳正な手続きをへまして、このたび4室すべて入居者が内定しました。
 すでに活動を開始しているメンバーは、演劇集団の「風煉ダンス furen-dance」、パフォーマンス・カンパニーの「すこやかクラブ Sukoyaka club」、イラストレーター&チョークアーティストの「Chalk2U(チョークトゥユー)」です。もう1室は夏ごろ入居予定です。
 またプロジェクト・パートナーズとして、サイエンスの恐竜くん、自転車の東京ヴェントスに加えて、新たに演劇団体の「MY COMPLEX(エムワイ・コンプレックス)」と「Theatre Ort(シアター・オルト)」が加わりました。来年度からスタートするコミュニケーション・スクール事業やカフェ・シアター事業の企画・運営に加わります。

 「シェア・オフィス・メンバーとプロジェクト・パートナーズってどう違うの?」の質問にお答えすると、メンバーが企画・運営する事業をたちかわ創造舎が協力するのがシェア・オフィス・メンバーで、たちかわ創造舎が企画・運営する事業に協力してもらうのがプロジェクト・パートナーとなります。
 今後、たちかわ創造舎における芸術文化活動への支援は、稽古場や作業場として場所を貸し出しするスペース利用ではなく、シェア・オフィス・メンバーやプロジェクト・パートナーズによる地域住民や立川市民に向けての企画を共に実現することへ移行します。
 なお、撮影でのご利用や、たちかわ創造舎を共催とするイベントへの貸し出しはこれまで通り行っていきますので、お問合せ下さい。

 シェア・オフィス・メンバーへの活動支援は、たちかわ創造舎の事業の三本柱の一つ、「インキュベーション・センター事業」にカテゴライズされます。インキュベーションは起業・創業支援の意ですが、文化におけるインキュベーションとは「人を育てること」に他なりません。三本柱のうち、インキュベーション・センター事業は「人」、フィルムコミッション事業は「収益」、サイクル・ステーション事業は「アクセス」と、施設運営のための「人・収益・アクセス」を相乗効果で伸ばしていけるのが、たちかわ創造舎の運営の特色といえます。
 そのうえで、私が、シェア・オフィス・メンバーやプロジェクト・パートナーズに、ぜひ地域や市民の方へ提供して欲しいと望んでいるのは「学び」と「祝祭」です。メンバーやパートナーが、どんな発想と知恵を発揮して、たちかわ創造舎および立川市、多摩エリアを「学び」と「祝祭」で彩ってくれるのか、皆さんもご期待ください。

 

 なお、シェア・オフィス・メンバーのプロフィールと活動予定、プロジェクト・パートナーズのプロフィールは来月ウェブにてご紹介いたします。

2016年2月29日

ディレクターメッセージ vol.3 まちづくり=街を演出することの思いやりと勇気

 2016年が始まり、たちかわ創造舎内も来年度に向けて準備が活発になってきています。昨年9月からの半年の試運転をへて、4月からの1年は立川市および多摩エリアへの発信をより強めていく飛躍の年度にしたいと考えています。

 さて、私が立川市と関わるようになってよく出会うようになった言葉に、「まちづくり」があります。ここでいう「まちづくり」とは、もちろん建物や道路を作ることではありません。「どんな街が暮らしやすいのか」の理念の共有と、実現への努力のことです。理念というと難しく感じますが、「考え方」と言い換えてもいいです。また、「まちづくり」と言ってもそれは新たな街を作ることではありません。今ある街の姿を少しだけ変えることになります。
 つまり、「まちづくり」とは、多くの人に街への考え方を変えてもらうことによって実現するものと言えます。

 人と人との付き合い方の中で、考え方を変えてもらうことほど難しいことはありません。それは相手に今までの常識だったり、やり方だったりを疑えという要求になるからです。疑うことには痛みが伴います。相手の痛みに無頓着にただ変えろと言っても、うまくいくはずがありません。「まちづくり」の難しさはここにあると私は感じています。

 では痛みを思いやれればいいのかというと、そう単純でもなく、思いやった上で「それでも変えてください」と言うのは、なかなか大変です。相手の痛みをふまえて、なお相手を説得しようとするには勇気が必要です。
 私の本職は舞台演出家ですが、俳優に考え方を変えて欲しいと要求することはよくあります。それを舞台の世界ではダメ出しと呼ぶのですが、ダメ出しされることに大きな痛みを感じる俳優も少なくありません。それでも、演出家は勇気をもって俳優への要求を行わなければいけませんし、また俳優もその痛みを乗り越えて変わろうとしなければなりません。そうしなければ良い創作ができないからです。しかし、そうした演出家と俳優の関係を可能にするには、互いに言葉を尽くす必要があります。
 「まちづくり」という言葉に出会い、実際いくつかの試みに触れたとき、「まちづくり」は演劇作品の創作に似ていると思いました。

 冒頭に書きましたように、たちかわ創造舎が来年度から立川市や多摩エリアに活動を発信していくということは、芸術やスポーツによる「まちづくり」に参加していくことになります。それは、つまり「街を演出する」ということです。勇気をもってそのことに取組み、言葉を尽くしていきたいと考えています。
 2016年も、たちかわ創造舎をよろしくお願いします。

2016年1月15日

ディレクターメッセージ vol.2 大きな容れ物としてのたちかわ創造舎

 9月27日に、たちかわ創造舎がオープンしてから2か月が経とうとしています。その間に、サイクル・ステーション事業として『サンセット・シクロクロス』『TAMAGAWA水の道・らいど2015』を共催。Tachikawa Cyclig SchoolのBASICでは『じてんしゃの学校』をLesson2まで終え、自転車の楽しみ方を提案するFUNでは『湧水をたずね、野点であそぶ』を行いました。
 スポーツサイクルの初心者からベテランまで、参加者の方の評価や満足度が高く、自転車ユーザーや業界からの注目と期待が高まっているのを実感しています。多摩川サイクリングロード沿いに誕生した、スポーツサイクルの安全向上とマナーアップの学びの場、および情報発信の基地として上々の滑り出しと言えます。

 学校の施設を撮影に貸し出すフィルムコミッション事業も、ほとんど毎日のように問合せやロケハンが入り、ドラマやCM、ミュージックビデオ、写真の撮影などに使われています。こちらは近隣の住民の皆さんの協力を得ながら、弾力的な運営を行っています。今後も、たちかわ創造舎の財政基盤を支える重要な事業として展開していきます。
 芸術文化による交流事業としては、Theatre Ortによる演劇公演『想稿・銀河鉄道の夜』や、よみしばい『よだかの星』をたまがわ・みらいパークまつりで上演しました。どちらも予想を上回る観客の方に集まっていただき、作品の評判も良く、「今後も定期的に上演してほしい」の声も多く聞こえています。
 また、創造舎近くの新生小学校で学芸会のための演劇ワークショップを3年生以外の学年に、先生方と協働して行いました。おかげで子ども達に顔を覚えられ、道で出会えば遠くから呼ばれ、放課後になると何人もの子ども達が遊びに来てくれるようになりました。彼らにとっての新たな居場所になっているのなら幸いです。
 そして、これからが楽しみな事業としては、インキュベーション・センター事業であるシェア・オフィス・メンバーも近日中に決定します。ジャンルの違うメンバーが、創造舎内で活動を始めます。メンバーが企画したワークショップやイベントも今後、開催予定です。

 こう書いていくだけで、この「たちかわ創造舎」という施設が、いかに多岐にわたる活動を行っているのかを実感します。私は「たちかわ創造舎」を大きな容れ物にしていきたいと考えています。いろいろな形のものを入れることができ、なお余裕のあるような大きな大きな容れ物。
 大きくない容れ物にたくさん物を入れようとすると、同じような形のものをぎちぎちに詰めることになります。多様性や間に余裕を持たせることは「ムダ」を発生させることになります。そこからは、「寛容」も「許容」も「包容」も失われていきます。逆に言うと、「寛容」と「許容」と「包容」を育んでいくことが、大きな容れ物としての場を守り育てることになります。
 そうした場を広げていくことが、人々の集まる広場を作ることであり、それを社会にまで広げると社会包摂へとつながっていきます。

 たちかわ創造舎は、わずか2か月の間に様々な分野の方が集まる施設となってきました。もともと、多摩川小学校やたまがわ・みらいパークとして、この場所を愛してくださった方々に加えて、新たな人々がこれからも続々と、「学び」と「交流」と「創造」を求めて集まってくることでしょう。そうした人々とともに各事業を通して、寛容や許容や包容によって、たちかわ創造舎を大きな容れ物にするべく、日々の活動に勤しんでまいります。

2015年11月30日

ディレクターメッセージ vol.1 開かれた対話の場・プロフェッショナルによる支援・地域課題の解決

2012年9月から準備を進めてきた「たちかわ創造舎」が、いよいよオープンします。
この3年の間に、私たちは多くの立川市民の方や、立川を拠点に活動をしている方にヒアリングを行い、立川市や多摩エリアの文化状況と地域課題について、取材と熟考を重ねてきました。並行して、行政および地域住民の方々を代表する「たまがわ・みらいパーク」との三者協議を20回近くに渡って行い、運営にまつわるさまざまなことを決めていきました。まずはそうした、これまでに出会い、言葉を交わしてきた皆様に感謝申し上げます。

私は、この「たちかわ創造舎」のチーフ・ディレクターに就任してから、今の日本の状況とも合わせ、ますます「開かれた対話の場」を作っていくことの意義を強く感じています。かつてないほど、コミュニケーション力の重要性が叫ばれていますが、実態はどうでしょうか。多数の空気に合わせることがコミュニケーションのうまさになってはいないでしょうか。コミュニケーションとは「対話」による「説得」であり、そして、その結果としての「連帯」もしくは「許容」です。それは、自分と考え方や生き方の違う人と一緒に暮らしていくための知恵と技術です。
開かれた対話の場を作ることが、人々が共に生き、共に暮らすための知恵と技術を学ぶ場を作ることになります。その知恵と技術を「文化」と呼びます。私たちは「たちかわ創造舎」を、対話から文化が生まれる場にしていくために尽力していきます。

また、これから、たちかわ創造舎には、多くのアーティストやアスリート、ベテランから駆け出しに至るまで、様々な文化の担い手が集まってくることでしょう。そこに年齢や国籍の制限はありません。たちかわ創造舎ではさまざまな事業を展開していきますが、そのすべてに「プロフェッショナルによる支援」という要素が入ります。専門的な知識や体験を得たい人と、自身の専門性を発揮したい人の双方が出会う場にしていきます。
私も週に4日は「たちかわ創造舎」にいます。演劇についてもっと知りたい中高生や学校の先生、演劇を続けることに悩んでいる学生や若者は、訪ねてきてください。できる限り相談に乗ります。

もう一つ、これから活動を行っていく上で、廃校を利用したプロジェクトは今や日本各地で行われていますが、それぞれの地域が抱えている課題に合わせたプロジェクトを展開できるかが重要です。団地の活性化、サイクリングロードの安全性と至便性の向上、立川駅南側の文化拠点のネットワーク化などが、たちかわ創造舎のある地域の重要な課題です。こうした「地域課題の解決」に向けた事業を提案していくことも、たちかわ創造舎のミッションになります。

ようやく「たちかわ創造舎」が産声をあげます。すでに立川市内のみならず多くの方から期待の声が寄せられています。そうした声に力を得つつも、拙速にならぬよう一歩一歩、これまでしてきたように、取材と熟考、対話を重ねながら、スタッフ、プロジェクト・パートナー、シェア・オフィス・メンバー、利用団体の方々、そして皆様と歩んでいきたいと考えています。オープンした「たちかわ創造舎」のこれからにご期待ください。

2015年9月24日